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ミュージアムの多様な輝きをおとどけします

ICOM京都大会組織委員会と国際委員会担当窓口者による意見交換会〜必要なのは血の通った双方向のコミュニケーションとセレブレーションである〜

博物館で働く人や関わる人とったミュージアムプロフェッショナルにとって 2019年の一番熱いニュースとは、何でしょうか。

 

それは、「ICOM(国際博物館会議)の京都大会開催」と言っても、過言ではないと思います。

 

ICOMは、International Council of Museumの略で、日本語では「アイコム」と発音します。世界の博物館を取りまとめる世界最大で唯一のNGOです。

ICOMは30以上の国際委員会で組織されています。個人会員は、どこか1つの国際委員会に所属するのがルールです。

 

ICOMでは、3年に1度全国際委員会が集まる大会が開かれます。2019年に、日本で初めて京都にて開催されたのです。

 

ちなみに、国際委員会の年次大会もICOM京都大会は兼ねており、「国際委員会の年次大会の成功が全体の成功の半分を占める」と言われるほどです。

 

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大会内容については、下記の記事を読まれることをお薦めして・・・

早速タイトルにある本題に入りたいと思います。

 

bijutsutecho.com

 

2月23日(日)午前中、ICOM京都大会2019の国際員会担当窓口と京都大会組織委員会による意見交換会が行われました。

 

「国際委員会担当窓口(以下、担当窓口)」というのは、国際委員会と、京都大会組織委員会(以下、組織委員会)の間をつなぐ役割です。私も若輩者ながら一役を担わせていただきました。

担当窓口は、国際委員会が京都大会でどのような年次大会を開こうとしているのかを組織委員会に情報共有するという役割でした。上記でも触れた通り、国際委員会の年次大会の成功を重視し、組織委員会が組織したポジションでした。

 

 

その担当窓口のほとんどの方が、東京に集まりICOM京都大会運営や、担当窓口業務について意見を交わしたのです。

 

結論を先に申し上げると、必要なのは、「組織委員会と担当窓口のコミュニケーション」だと感じました。

 

 

 

どのような点から、私がこう思ったのでしょうか?

 

例えば、お弁当に関する意見交換で・・

担当窓口から、「お弁当の量が少なかった」「お弁当が貧相だった」という意見が上がりました。それに対し、組織委員会は「会場側が貸与の条件として、お弁当を会場内の厨房で作るという条件を頑なに譲歩しなかった。組織委員会が会場に何回も足を運び、試食して、作った。前回の大会で出た昼食の評判が悪いことはわかっていたためだ」

そう聞けば、「外国人の方に『量は少なくないですか?』と聞いたが、とても感動しながら食べていた」という意見が出たり、「小脇に抱えて持ち運びやすかった」などの意見が続きました

 

他にも、キーノートスピーカーや登壇者に男性が多数だったことに関する意見交換で・・

担当窓口から「ジェンダーバランスへの配慮が欠けていた」という意見に対し、組織委員会からは、「もともと6名のキーノートスピーカーのうち2名は女性であったが、両名から断られてしまった」と説明が。「もともとジェンダーバランスについても、考えていたが断られてしまったこと」と、「ICOM本部との調整に時間が取られ、キーノートスピーカーを追加検討する時間がなくなってしまった」という事情を組織委員会は抱えていたのです。そして、「ジェンダーではなく、経歴や肩書きなどでスピーカーを選んだため、そうなってしまった」とも語られ、これは組織委員会だけが責められる問題ではないとも感じました。寧ろもっと根は深く、私は日本の社会全体のシステムとして女性のミュージアムプロフェッショナルの数がなぜ少ないかといった側面を問題視する方が適切なように聞こえました。(肩書きや経歴よりもジェンダーを優先しろ、という声もあろうが...)(そして、問題としては即座に解決できなくても、意見交換の場で声をあげることが、ジェンダーのアンバランスを可視化させるいい機会なのかもしれません)

 

担当窓口が、組織委員会に物申すという、

【担当窓口 → 組織委員会

という構図は、担当窓口は仕事を任された立場なのだから、労働を与えた向こうの立場に意見を言う筋合いは、誰にでもわかりやすいものでしょう。

私もこの構図に自分を安住させると、思い込みによる自分の意見も形成しやすくなったと感じます。(反省しています)

 

 

担当窓口が大変な仕事になってしまった原因を組織委員会に収束させるのはあまりにも安易な思考ではないか、と思うのです。

 

お互いがお互いの立場で苦労した点があったため、相手が縛られている条件や置かれている状況・立場などが見えていなくなり、責める言葉も聞かれたり、ネガティブな指摘が多くなってしまったと感じました。

 

ひいては、これからもICOM日本委員会(日本の個人会員と博物館会員を取りまとめる国内委員会)とICOM個人会員間において、民主的で、自由に意見を言い合い、互いを思いやる今日のような時間がもっと必要なのだろうと思います。

 

それによって、双方が関係を築き、歩み寄り、生産性の高いICOM日本委員会が成立するのではないでしょうか。これが、日本全体の博物館学の底上げにつながることでしょう。

 

このような流れがICOM京都大会が作った「レガシー」として、将来に引き継がれることを切に願います。

 

(これは、ミュージアムの問題ではなく、マネジメントの問題ですね・・)

 

 

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以上、若輩者ながら、意見交換会に出席して思った次第です。

 

さいごに、

ICOM京都大会が、ICOM史上もっとも多い参加者数だったにも関わらず、満足度は90%を超えました。私は、この事実に対し、ただただ称賛が足りないのではと思います。

 

組織委員会、運営委員会のみなさま、本当にお疲れ様でございました。

未だかつて誰も経験したことのない日本でのICOM大会のオーガナイズ、そしてそれが大成功だったことに、心より敬意を評します。