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ミュージアムの多様な輝きをおとどけします

「展示論講座〜博物館の展示〜」に参加してきた〜1日目のまとめ

日本展示学会主催の「展示論講座〜博物館の展示〜」に参加してきました。

2014年9月3日~9月5日 @京都国立博物館 にて行われました。

全体的な感想を最初に書くと、

とても充実していたということ、特にスピーカーの先生方の専門のいい塩梅にバラバラで幅広く話を聞けたと思う。例えば、展示の歴史から、大学博物館での展示、美術館での動態展示のお話、などなど。テーマを絞って、そのテーマの中で最先端の事例をしている方々が登壇されていたような気がする。

 

これから少し私の感想も加えながら書いていこうと思います。

(時系列に講演を並べていきます)
9/3 1日目@京都国立博物館新館、保存館

 

*「ヨーロッパ・ミュージアム展示論」

高橋貴教授@愛知大学/日本展示学会長

高橋先生がサバティカルの間に見てこられたヨーロッパの展示の例を紹介してくださいました。バックヤードを開示するという展示方法や、3年間のプロジェクトの事後発表としての展示の役割、ナチスドイツという歴史への決別のための展示など、内容は盛りだくさんでした。高橋先生が「展示方法は新しさだけを示すだけではない、効果を考えなければいけない」といっていたのは印象的でした。新しい技術を取り入れて、発表していくのは、来館者の目をひく一つの方法かもしれないけれども、来館者に与える影響を考えるのは、何よりも最初に考慮されなければならない事柄なのかと思いました。あとは、展示の目的を明確にして、それに沿うような展示方法を選んでいく大切さも勉強になりました。

 

*「大学における展示論ー博物館展示からのひろがりー」

徳田明仁愛媛大学ミュージアム

展示デザイナーから愛媛大学ミュージアムへ移ってこられたという徳田先生。大学の学長直属の機関という位置づけの愛媛大学ミュージアムは、徳田先生が大学の広報担当も務めているということもあって、地方国立大学、ましてはこの少子化の日本で生き残るための大学戦略としての大学ミュージアムは、とても緊張感のあるなかでの展示や運営が行われていることがわかりました。大学の強みはなんといっても研究者の先生方がたくさんいらっしゃること。その学術的な知見と、元展示デザイナー徳田さんのアイディアが融合する形で、進められる展示計画は慌ただしいながらも、魅力的なものへと仕上がっているなぁと思いました。
一つ気になったのは、意図したメッセージを伝達するというのが展示の経緯だということ。これが限りなく100%通じるというのが良い展示ということに言及されていて、これは議論が分かれるだろうなぁと思っていました。

 

*展示とデザイン 

木村浩筑波大学

木村先生は、展示の歴史の概要を説明してくださいました。もともと「博物という言葉は、イコールNatural Historyだった」といいます。キーワードは、鉱物や植物で、それらを採集、分類するところから、始まったとされます。博物館の起源の話をすると必ず出てくるのは「驚異の部屋」(1655)です。このとき世界は大航海時代。プラントハンターと呼ばれる人たちが、世界へ出てゆき面白いものを持ち帰ってきていたそう。この時代の博物の目的は「珍しいものを見せること」。この目的が転換しかかったのは、ロンドンで行われた博覧会。ここでは「イギリスの力を見せつける」という(過剰な言い方かもしれないけどw)というのが目的として掲げられたそうです。その後も展示することの目的は時代の流れに寄って変化してきます。時代はロシアの社会主義。ロシアは、自国の力を見せつけるためにグラフィック力を用います。ここで、インフォグラフィックの分野がぐんぐんと進み、そこで、オーストリア人の教育学者/社会学者のノイラートが、アイソタイプを用いて展示することを始めました。ノイラートがアイソタイプを必要としたのは、今のEUの国々は、国通しが隣接しているが、言語がまったく異なるという壁を越えられないために、インフォグラフィックで戦争の悲惨さを知らせるためだったそうです。
(アイソタイプについては木村先生のまとめがわかりやすいです→アイソタイプ

その後、ピクトグラムがはやりだします。木村先生は「展示という概念は時代とともに変わって行くものである」と発言し、「展示はデザインである」と定義していました。