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ミュージアムの多様な輝きをおとどけします

日本展示学会「展示論講座〜博物館の展示〜」2日目のまとめ

日本展示学会主催の「展示論講座〜博物館の展示〜」に参加してきました。

2014年9月3日~9月5日 @京都国立博物館 にて行われました。

 

9/4 9:10am- 

*歴史を展示する〜あらためて「展示すること」を考える〜

石井一良(奈良県平城京歴史館 館長)

石井先生の発表は、落語のように陽気な雰囲気。展示への試みは本気です。遣唐使が乗っていた船を再現し、歴史館の外側に巨大複製を作った平城京歴史館。県知事から「奈良には歴史物はあるが、歴史の展示はない」と酷評され、「歴史を展示する」ことにしたという石井先生。印象的だったのは歴史館のターゲット層がはっきりしていたこと。ずばり小5〜6年生、中学生。これらの年齢の人がわかる歴史展示を行うことと決めているため、このターゲットに沿った展示仕様で、巨大複製や、五面のマルチ画面でのビデオ上映などを行っているそうです。講演の最後には、「予算獲得」の質問がされ、それがとても印象的でした。「県の政策を読んで、それに博物館がどのように貢献できるのか。相手の主張を取り込みながら自分たちの力でやり遂げられるような提案書を書かなければ受け取ってもらえない。自分たちのやりたいことばかりが書いてある提案書では誰にも読んでもらえない。」一語一句そのままこの通り言っているわけではないですが、このような内容の発言をしていた石井先生。今度是非、歴史館にも、石井先生にもお話を聞きに訪問してみたいと思いました。個人的には、遣唐使船の複製によって起こりえるコミュニケーション調査してみたいなぁ。

 

*展示と災害ー博物館展示における被災文化財の可能性

日高真吾(国立民族博物館 准教授)

被災した文化財を救出して、再保存するプロセスをまずは教えてもらいました。この分野は私にとっては本当に未知の領域。でも災害大国日本においては早めの対策が必要なプライオリティの高い領域だと思いました。
<復興のプロセス>
①救出(残骸と文化財をよりわける作業)
②一次保管
③整理・記憶(点数を記録して、博物館台帳を確認する作業)

④応急処理(さらに悪い状態にならないようにするための作業。初期の泥落としなど)

⑤保存修復(専門家が行う作業)

⑥恒久保存

⑦研究・活用(展示へと転換させるための調査など)

⑧防災(経験と教訓を生かす場)

日高先生は、「被災文化財とは、被災、災害そのものを思い出せるもの」だと定義します。それは災害で被災した文化財だけではなく、災害の痕跡を残す記念碑や無形文化財も含まれ、災害の規模を絞める古文書なども含まれるそうです。ここで厳しく指摘されたのは、民俗文化財を修復する人が不足していること、災害が起こったときに行われなければならないコミュニケーション、組織不足だそうです。日高先生は、講演の最後に、「博物館は人の記憶を思いとどませる役割がある」とのべ、地域文化は再び人々が集える場・環境(お祭りや、芸能など)の環境を整える媒体になりえると主張していたのが印象的でした。