PEARL

ミュージアムの多様な輝きをおとどけします

「展示論講座〜博物館の展示〜」に参加してきた〜3日目のまとめ

9月5日(金)最終日のまとめを書きます。

*博物館における企画展・特別展の企画等について

(松本伸之先生 京都国立博物館

松本先生は、今年の3月まで東京国立博物館にて勤務されており、4月から京都に移動されたということでした。松本先生はまず、学芸員の役割について厳しい意見を持っておられました。「学芸員には総合的視点が不足している。社会的情勢をみる資質を磨いていかなければならない」というお話から始まりました。展覧会における「訴求力」についても「どこを強く訴えるのか、展覧会に来てもらう前と来てもらった後のイメージをどのようにもってもらうのか」を意識しなければならないというお話も印象的でした。

展覧会は、スポンサーや行政の圧力が強いためか何万人来場したのかという数でその展覧会の「良さ」を図ってしまうところがありますが、もっと質を問わなければならないと松本先生は主張します。「究極のところ学芸員の自己満足の展示をしているのではないか、観る側の視点が書けているのではないか」との指摘はまっすぐに突き刺さってきました。

学芸員課程に関する研究に関する知識は乏しいので、もう少し勉強したいところだなぁと思っています。

 

*展覧会を「開く」ということ
(不動美里先生 姫路市立美術館

9年間、金沢の21世紀美術館(以下、まる美)に勤めておられた不動先生。まる美では、レジストラー、キュレーター、エジュケーター、コンサバターやその他のスタッフすべてが「メディエイター」になることに力を注いでいたとおっしゃっていました。また、「開かれた」美術館を目指そうということでまる美は教育普及に力を入れてきたといいます。例えば、演劇を展覧会の開かれたある空間で行うことなどを事例としてあげてくださいました。また、「作者が過去の作品と向き合うこと、それによって今向き合うと新たなできごとが生まれ、予想もつかないことが更に起こること(創造すること)がまさに芸術だろうと思った」そうです。そこでうまれたプロジェクトが、山下洋輔さんの燃えるピアノ。山下さんが、まる美の開かれた空間で過去の自分の作品と対峙するパフォーマンスをおこなったそうです。そこから、新しいプロジェクトがうまれたこともあったそうです。このようなパフォーマンスなどの動態展示について不動先生は研究しておられます。「ワークショップのドキュメントは、美術史の文脈では無視されがちだけれども、それこそを収集し、保存していくことがこれからの美術館の役目ではないか」というお話をされていたのが大変印象的でした。
こういった保存や、収集の定義が移り変わっていく点に関しては常に議論したいところなのではと思いました。