ミュージアムマネージメント学会、関東支部第10回エジュケーター研修に参加しました
ミュージアムマネージメント学会、関東支部第10回エジュケーター研修が、2014年12月5日(金) 18:15 より東京都美術館アートスタディルームにて行われました。
ゲストは、吉荒夕記さん
『アイデンティティー危機時代におけるミュージアム 多文化社会ロンドンから』
という内容のトークを聞いてきました。
吉荒さんは、レスター大学院を修了後、ロンドン大学へ進学され南アフリカの美術館の研究を行い博士学位を受領されています。最近、『美術館とナショナルアイデンティティ』という本を執筆されました。
今回、吉荒さんが出版に伴い一時帰国をされたということで、研究会が行われました。
会の進行と、この会の企画立案者はハンズオンプランニングの染川さんでした。
吉荒さんは、ベネディクト・アンダーソンの『想像の共同体』や、アントニー・スミスの『ナショナリズムの生命力』を参考にしながら、「遺産や文化の価値が運ばれ、再解釈され、再構成されるのがミュージアムである」と説明します。
ミュージアムが所持する「モノ」同士を繋げることによって「意味をもたらすこと」が、ストーリーを構成することであり、アイデンティティを育むものであると主張。
- もの=実体のもの・象徴の力
- ストーリーの力
- ミュージアムに足を運び、そこを見学するということ
が、ミュージアムの持つ特徴であり、アイデンティティを育む役割となるそうです。
吉荒さんは、日本のナショナルアイデンティティは明示以降に危機にさらされていくとおっしゃいます。この「アイデンティティの危機」によってもたらされる負の要因として..
- 衝突、軋轢、不和、再調整
- 「○○人」であるとは何か
- ナショナリズムの台頭
が挙げられると言います。
フランス革命後、王がいなくなったフランスでは、市民がむき出しの国家となり市民自らが「フランス人」にならなければならない時代があったそうです。そこで設立されたのがルーブル美術館です。美術館が国のアイデンティティを市民へ植え付けるための装置として設置されたという歴史があると吉荒さんは説明してくださいました。
吉荒さんは、このアイデンティティの危機に関して、イギリスのImperial War MuseumとBritish Museumを事例として説明してくださいました。
ここで気をつけなければいけないのは、ミュージアム運営側が用意するアイデンティティと、来館する人が持つアイデンティティを別のものとして考えることではないかと思いました。
普段はイギリスにお住まいの吉荒さんによる貴重な講演でした。ありがとうございました。
定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行 (社会科学の冒険 2-4)
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