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ミュージアムの多様な輝きをおとどけします

What do you think about this?「これについてどう思う?」〜ICOM博物館の定義の見直し〜

ICOM(世界博物館会議)が、「博物館の定義」を見直そうとしています。

 

ICOM京都大会の臨時総会で、提案された博物館の定義の採択をする予定でしたが、色々な意見が出て、採決自体が延期されました。

 

www.youtube.com

 

「新しい」定義、とありますが、現在の定義はどのようなものなのでしょうか?

 

2007年にウィーンで採択された定義が、現在の定義です。

 

“A museum is a non-profit, permanent institution in the service of society and its development, open to the public, which acquires, conserves, researches, communicates and exhibits the tangible and intangible heritage of humanity and its environment for the purposes of education, study and enjoyment.”

 

博物館とは、社会とその発展に貢献するため、有形、無形の人類の遺産とその環境を、教育、研究、楽しみを目的として収集、保存、調査研究、普及、展示する公衆に開かれた非営利の常設機関である。
ICOM日本委員会訳)

 

そして、現在提案されている新たな博物館の定義案はこちらです

 

Museums are democratising, inclusive and polyphonic spaces for critical dialogue about the pasts and the futures. Acknowledging and addressing the conflicts and challenges of the present, they hold artefacts and specimens in trust for society, safeguard diverse memories for future generations and guarantee equal rights and equal access to heritage for all people. Museums are not for profit. They are participatory and transparent, and work in active partnership with and for diverse communities to collect, preserve, research, interpret, exhibit, and enhance understandings of the world, aiming to contribute to human dignity and social justice, global equality and planetary wellbeing.

 

引用先:Museum Definition - ICOM - ICOM

 

博物館は、過去と未来に関する批評的な対話のための、民主化を促し、包摂的で、様々な声に耳を傾ける空間である。博物館は現在起こっている紛争や課題を認識し、それらを考察しつつ、社会のために託された資料や標本を保管し、未来の世代のために多様な記憶を保存し、全ての人々に遺産に対する平等な権利と平等なアクセスを保証する。
 
博物館は、営利を目的としない。博物館は、開かれた公明正大な存在であり、人間としての尊厳と社会正義、世界的な平等と地球全体の幸福に貢献することを目的に、多様なコミュニティと手を携えて収集、保存、研究、解釈、展示並びに世界についての理解を高めるための活動を行う。
(仮訳)

 

さて、この訳をご覧になって、ご自身が関係されているミュージアムと、「遠いな」と思われたでしょうか?それとも、「そうそう、これがミュージアム」と納得されたでしょうか。

 

隣の人と5分間話してください。

 

なーんて・・・!(笑)

 

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定義について、自分なりにもう少し考えたい方へ

 

ICOM MPR(マーケティング・交流国際員会)が出した下記の質問に自分なりに答えてみることで、考えが少しずつまとまるかもしれません。私も実際に答えましたが、今はよりベターなアイデアを持てたと思います。

 

ICOM MPRのFacebookページで、1つの質問に1つのスレッドが立ち上がっています。もし他の方と考えを交換したいのであれば、スレッドにコメントもチラホラ見られますので、投稿してみてはいかがでしょうか?

www.facebook.com

 

質問:

1) What aspects of the 2007 definition do you like and why? In 250 words or less: 

 

2) What aspects of the 2019 draft do you dislike and why? In 250 words or less:

The remaining questions are based on the Museum Definition, Prospects and Potentials (MDPP) Committee's criteria within which a new museum definition should be considered. Edit each phrase or briefly explain your thoughts/concerns for each phrase:

3) Political and Moral Self-Understanding: Museums are democratising, inclusive and polyphonic spaces for critical dialogue…

4) Time: ...about the past and the future. 

5) Object of Investigation: Acknowledging and addressing the conflicts and challenges of the present,...

6) Collections, information, and content: ...they hold artefacts and specimens in trust for society, safeguard diverse memories for future generations…

7) Accessibility: ...and guarantee equal rights and equal access to heritage for all people.

8) Commercial AspectMuseums are not for profit. 

9) Responsivity: They are participatory and transparent, and work in active partnership with and for diverse communities...

10) Fields of Activity: ...to collect, preserve, research, interpret, exhibit,... 

11) Goal/Objective: ...and enhance understanding of the world...

 

12) Overarching Objectives: ...aiming to contribute to human dignity and social justice, global equality and planetary wellbeing.

 

ICOM京都大会組織委員会と国際委員会担当窓口者による意見交換会〜必要なのは血の通った双方向のコミュニケーションとセレブレーションである〜

博物館で働く人や関わる人とったミュージアムプロフェッショナルにとって 2019年の一番熱いニュースとは、何でしょうか。

 

それは、「ICOM(国際博物館会議)の京都大会開催」と言っても、過言ではないと思います。

 

ICOMは、International Council of Museumの略で、日本語では「アイコム」と発音します。世界の博物館を取りまとめる世界最大で唯一のNGOです。

ICOMは30以上の国際委員会で組織されています。個人会員は、どこか1つの国際委員会に所属するのがルールです。

 

ICOMでは、3年に1度全国際委員会が集まる大会が開かれます。2019年に、日本で初めて京都にて開催されたのです。

 

ちなみに、国際委員会の年次大会もICOM京都大会は兼ねており、「国際委員会の年次大会の成功が全体の成功の半分を占める」と言われるほどです。

 

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大会内容については、下記の記事を読まれることをお薦めして・・・

早速タイトルにある本題に入りたいと思います。

 

bijutsutecho.com

 

2月23日(日)午前中、ICOM京都大会2019の国際員会担当窓口と京都大会組織委員会による意見交換会が行われました。

 

「国際委員会担当窓口(以下、担当窓口)」というのは、国際委員会と、京都大会組織委員会(以下、組織委員会)の間をつなぐ役割です。私も若輩者ながら一役を担わせていただきました。

担当窓口は、国際委員会が京都大会でどのような年次大会を開こうとしているのかを組織委員会に情報共有するという役割でした。上記でも触れた通り、国際委員会の年次大会の成功を重視し、組織委員会が組織したポジションでした。

 

 

その担当窓口のほとんどの方が、東京に集まりICOM京都大会運営や、担当窓口業務について意見を交わしたのです。

 

結論を先に申し上げると、必要なのは、「組織委員会と担当窓口のコミュニケーション」だと感じました。

 

 

 

どのような点から、私がこう思ったのでしょうか?

 

例えば、お弁当に関する意見交換で・・

担当窓口から、「お弁当の量が少なかった」「お弁当が貧相だった」という意見が上がりました。それに対し、組織委員会は「会場側が貸与の条件として、お弁当を会場内の厨房で作るという条件を頑なに譲歩しなかった。組織委員会が会場に何回も足を運び、試食して、作った。前回の大会で出た昼食の評判が悪いことはわかっていたためだ」

そう聞けば、「外国人の方に『量は少なくないですか?』と聞いたが、とても感動しながら食べていた」という意見が出たり、「小脇に抱えて持ち運びやすかった」などの意見が続きました

 

他にも、キーノートスピーカーや登壇者に男性が多数だったことに関する意見交換で・・

担当窓口から「ジェンダーバランスへの配慮が欠けていた」という意見に対し、組織委員会からは、「もともと6名のキーノートスピーカーのうち2名は女性であったが、両名から断られてしまった」と説明が。「もともとジェンダーバランスについても、考えていたが断られてしまったこと」と、「ICOM本部との調整に時間が取られ、キーノートスピーカーを追加検討する時間がなくなってしまった」という事情を組織委員会は抱えていたのです。そして、「ジェンダーではなく、経歴や肩書きなどでスピーカーを選んだため、そうなってしまった」とも語られ、これは組織委員会だけが責められる問題ではないとも感じました。寧ろもっと根は深く、私は日本の社会全体のシステムとして女性のミュージアムプロフェッショナルの数がなぜ少ないかといった側面を問題視する方が適切なように聞こえました。(肩書きや経歴よりもジェンダーを優先しろ、という声もあろうが...)(そして、問題としては即座に解決できなくても、意見交換の場で声をあげることが、ジェンダーのアンバランスを可視化させるいい機会なのかもしれません)

 

担当窓口が、組織委員会に物申すという、

【担当窓口 → 組織委員会

という構図は、担当窓口は仕事を任された立場なのだから、労働を与えた向こうの立場に意見を言う筋合いは、誰にでもわかりやすいものでしょう。

私もこの構図に自分を安住させると、思い込みによる自分の意見も形成しやすくなったと感じます。(反省しています)

 

 

担当窓口が大変な仕事になってしまった原因を組織委員会に収束させるのはあまりにも安易な思考ではないか、と思うのです。

 

お互いがお互いの立場で苦労した点があったため、相手が縛られている条件や置かれている状況・立場などが見えていなくなり、責める言葉も聞かれたり、ネガティブな指摘が多くなってしまったと感じました。

 

ひいては、これからもICOM日本委員会(日本の個人会員と博物館会員を取りまとめる国内委員会)とICOM個人会員間において、民主的で、自由に意見を言い合い、互いを思いやる今日のような時間がもっと必要なのだろうと思います。

 

それによって、双方が関係を築き、歩み寄り、生産性の高いICOM日本委員会が成立するのではないでしょうか。これが、日本全体の博物館学の底上げにつながることでしょう。

 

このような流れがICOM京都大会が作った「レガシー」として、将来に引き継がれることを切に願います。

 

(これは、ミュージアムの問題ではなく、マネジメントの問題ですね・・)

 

 

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以上、若輩者ながら、意見交換会に出席して思った次第です。

 

さいごに、

ICOM京都大会が、ICOM史上もっとも多い参加者数だったにも関わらず、満足度は90%を超えました。私は、この事実に対し、ただただ称賛が足りないのではと思います。

 

組織委員会、運営委員会のみなさま、本当にお疲れ様でございました。

未だかつて誰も経験したことのない日本でのICOM大会のオーガナイズ、そしてそれが大成功だったことに、心より敬意を評します。

 

 

 

 

地球温暖化防止は、科学館から始まる。あなたの一歩を歓迎します!

 

皆さんは、「個人が行動して地球温暖化止まるの?」と疑問に思ったことはありませんか?

 

私も疑問に思っていた人の一人です。

そんな私が、今は地球温暖化を止める対策を始めています。

 

そのきっかけとなったのが、この動画です。

 

www.youtube.com

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国連でスピーチをするグレタ・トゥーンベリさん

For more than 30 years the science has been crystal clear. How dare you continue to look away, and come here saying that you are doing enough, when the politics and solutions needed are still nowhere in sight. You say you “hear” us and that you understand the urgency. But no matter how sad and angry I am, I do not want to believe that. Because if you really understood the situation and still kept on failing to act, then you would be evil. And that I refuse to believe.

 

30年以上もの間、科学は透き通って遠くが見えるほど明快な答えを出してきました。必要な場所に必要な政治や解決策がないにもかかわらず、あなた方はよくもここにきて「私たちは充分やっている」と、そっぽを向いて入られますね!あなた方は、私たち若い世代の声を「聞いている」と言い、重大な局面を迎えていることはわかっているんです、なんて言いますよね。私がどれほど悲しく、怒っているか関係なく、そんなこと信じたくありません。なぜなら、もしあなた方がこの状況を本当に、本当にわかっているのなら、なぜ行動しないのでしょうか。あなたは「悪魔」も同然です。そして、私はそうじゃないと信じたいんです。

 

 

このスピーチを聞いて、「オーマイガッ」と頭がクラクラしてきました。

 

私はこれまでに仕事で科学を扱い、人に教える仕事をしてきた「善良な大人」と思って生きてきたのです。ですが、世界の裏側にいるティーンエイジャーに「evil」だと現実を突きつけられました。感情に火がついた私は、「I’m not an evil!」と心の中でその言葉を振り払うように、静かにイラつきました。

 

次の瞬間冷静になって考えました。

 

「本当に悪魔じゃなかっただろうか?」

 

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私は、降参するように肩を丸めて、具体的な行動ができていなかったと、反省しました。また違った意味で頭がクラクラしました。

 

そこで私にとっては高価だった、小さく折りたためるお洒落なエコバックを買うことに決めました。

 

それから半年ほど経ちますが、いまでも私のカバンの中にいつでもそのエコバックが入っています。

 

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私が地球温暖化対策に対して、無力感を感じるとき、頼るブックレットがあります。

 

「170 Actions to Transform Our World」です。

drive.google.com

 

このブックレットの中に「地球温暖化に対するアクション」が10個載っています。

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地球温暖化防止へのアクション

 

 

1 食べ物をコンポストに入れよう

2 車の運転を減らそう。代わりに、もっと歩いて、自転車に乗って、公共交通を使おう

3 お店にはエコバックを持って行こう

4 髪の毛や洋服は自然乾燥させよう

5 ラッシュアワーの車の運転は避けよう

6 自分の車をメンテナンスしよう。よく手入れされている車は有毒な排気ガスをあまり出さない

7 毎年新しい木を植えるために、自分たちのコミュニティを組織しよう。木は二酸化炭素を吸い、酸素を吐き出してくれます

8 使っていないテレビ、PC、電子機器類の電源を抜こう

9 どういう方法で地球温暖化を止められるか、その気づきをシェアしよう

10必要なものだけを買おう。食べ物の20~50%が、結局はゴミの山になっています

 

 

あなたに、ピンときたアクションはあったでしょうか?

 

 

私たちは、地球がどうなっているかよりも、自分の幸せや自分の身の回りの人たちのウェルビーイングを優先したいときもあるでしょう。

確かに、地球温暖化を止めるために、自分の好きな長い髪の毛を短くして、毎日ドライヤーを使わないで、タオルで乾かすなんて、ハードル高いですよね。。。

 

では、自分の幸せも周りのウェルビーイングも維持したまま、行動できることはないでしょうか?

 

 

170 Actions to Transform Our Worldを教えてくれたのは、香港の気候変動専門の博物館の館長でした。

https://www.mocc.cuhk.edu.hk/en-gb/about-us

 

博物館は、地球温暖化について話すのに最適なプラットフォームです。近くの科学館に行って、スタッフと話してみてください。互いの意見を交わすことで新しい発見があるかもしれません。