”博物館の危機” が紹介
少し前ですが、NHKおはよう日本(NHKの朝のニュース番組)にて、「博物館の危機」が紹介されました。
ここでいう博物館の危機とは
1)予算確保が難しく、予算が減額されていること
2)人手不足であること
と、紹介されています。
この1)と2)が引き起こす、さらなる危機は
・修復が必要な収蔵品、劣化防止の作業が必要な収蔵品の数が把握できていないこと
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・予算と人手不足で修復が十分にできない
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・収蔵品が未来へ継承できない(研究資料・展示物として一般公開できない)
・人と人のあいだで、技術の継承ができない
と悪循環に陥っていくだろう、という話です。
最後に、北九州市立いのちのたび博物館 上田恭一郎館長の言葉が紹介されています。
「資料を集め、保存してデータベースを作る、そして研究する。
その結果を含め資料を展示して、みなさんに楽しんでいただく。
この4つのパターンがうまくまわれば、いい線にいく。」
この資料を集め、保存してデータベースを作る、そして研究するという循環を人的資源や予算が少ない中で、どのように機能させるかにいいアイディアが必要になるのでしょう。
博物館を経営する方はどのような新しい制度を作れるのでしょうか。
社会にいる人はどのようにこの悪循環を断ち切る支援ができるのでしょうか。
ヤノベケンジ氏の「サン・チャイルド」を福島市に設置。物議を醸す
8月3日(金)に福島市にある教育文化複合施設「こむこむ」の前に、
現代美術家ヤノベケンジ氏の作品「サン・チャイルド」が設置されたことについて、物議が広がり、ヤノベ氏は「大変申し訳ない」と謝罪をしました。
◇ニュース記事
◇ヤノベ氏が出した言葉
http://www.yanobe.com/20180810_KenjiYanobe_Statement.pdf
ヤノベ氏の言葉を読むと、7年前の事故のことを彷彿させることや、子どもに科学を教える施設でもあるその前に、科学的にはありえない空間線量率「0」と記載のあるアートを置くことへの批判などがあったようです。
今回取り上げているこのニュースは、端的に言えばアート作品の意味について議論することです。ただ、アート作品を展示する場所を提供するミュージアム、今回の場合は子ども向けの教育文化施設に関わる話でもあるともいえます。
ミュージアムは、こういった市民の意見や、政治家の意見、作家がもつ制作背景を話し合える、第三者的な場所である可能性を持っています。当事者である今回の教育文化施設での話し合いは難しいかもしれないですが、福島市近辺の美術館等で、このことについて話し合える場所・時間などが用意されることを期待します。
アートを社会がどのように受容していくのか、それは今までもあったプロセスですし、これからも必要な手続きでしょう。大きな災害を経験した地域が、芸術作品をどのように受け入れ、価値付けを決めていくべきかといった議論の手続きは、自然災害が多い日本で行われることで他の国の一つの事例として教訓として語り継がれていくのではないでしょうか。ぜひ、地域に住んでいる人、関係者で話し合ってほしいとおもいます。
「博物館教育論」を独学したい方へ:オススメの本
「博物館教育論」について、学芸員の資格を取るほどでもないし
だけれども、何か学びたいという方にオススメ
小笠原喜康, 矢島國雄, 並木美砂子『博物館教育論』(2012) ぎょうせい
博物館教育論とは?から、教育学の入門、年齢に応じた教育方法から、活動手法の評価や、館種別の教育方法、海外の事例などが見開き1ページごとに展開されているので、多くの事柄を網羅するのにはいいかもしれません。
私も授業を持った時には、学生に購入を薦めています。(ただ、本体が文系の教科書の中では高額なので無理強いはしていないです)
この中でも、自分が興味を持ったものを次は深読みできる本へとどんどん読み進めていけばいいと思います。