ミュージアムと他施設の連携の「型」
博物館と他施設の連携を担当しています。
そこで、連携する業務には、いくつか種類があると気付きました。
①他施設からのご依頼型
他の人を依頼状で派遣していただく。謝礼をお支払いの有無など
責任:依頼元
広報:依頼元
コンテンツ:派遣先(求められているものが明確)
メリット:業務が最初から最後まで見通しやすい
例:講演会
②共同出資型
人・お金・時間を双方平等に投資し合い、一つの事業を共に成し遂げること
責任:分担
広報:分担
コンテンツ:分担
メリット:業務内容を最初に合意して進められる。
信頼関係が深化する。
例:地域の人をターゲットにしたお祭り
③プロデュース型
1つの組織のプロデュース形式で、他施設へ依頼して事業を行うこと
責任:プロデューサー
広報:プロデューサー/委託先
コンテンツ:委託先(求められるものが変化し続ける可能性あり)
メリット:プロデューサーの力量次第で、これまでなかった新しい業務をつくることができる
例:大型の企画展覧会
上記は、事業を行う時の「型」ですが
事業を伴わず、常々「交流」をおこなって、
互いに、事業へと関係を発展させていく段階もあります。
そもそも、それぞれのミュージアムのミッションに照らし合わせ、「連携事業」を組織の中でどう位置付けるかによって、実行する戦略が変わってきます。
ですので、上記の事項に優劣はありません。その組織、時々の環境によって変化するものと思います。
ただ、自分が他組織と連携する時にどの型に近いか考えてみると、相手への期待や、自分の役割が明確になるかもしれません。
Withコロナ時代の博物館運営指針
日本博物館協会と、ICOM(世界博物館会議)が、新型コロナウイルス 感染症下における対策のガイドラインを示しました。
https://www.j-muse.or.jp/02program/pdf/coronaguide0000.pdf
https://icom.museum/en/news/museums-and-end-of-lockdown-ensuring-the-safety-of-the-public-and-staff/
私が働く現場でも、対策案の会議が日々行われています。
指定管理者としての一番の難しいところは、年間の事業計画が昨年度終わりに行政の決裁が降りてしまっているので、新型コロナウイルス 感染症に対応した策は、新たに行政に企画と予算の承諾を取っていかなければならない点です。急いで対応したいが、承認のためには説明も必要で、時間もかかります。
日本博物館協会のガイドラインでは、行政への予算や事業承認の柔軟な対応といった点にも言及いただきたかったです。
世界的パンデミックの時期に、ミュージアムに訪れたチャンスとは?〜自分たちの「そもそも」を問う
新型ロコナウイルス感染症は、まだまだ世界に影響を与えています。
ミュージアムの施設への影響も例外ではなく、日本や世界各国のミュージアムは休館を余儀無くされています。
暗いニュースばかり続いてしまいがちですが、
世界的パンデミックが起こったおかげ(?)で、起こった新しく前向きな取り組みということも沢山あると思います。何が思いつきますか?
私は、「オンライン診療」「在宅ワークの推進」が、パッと思いつきました。どちらも、私たちの暮らしの選択肢を広げてくれました。多くの選択から選べることは、時には幸せなことです。
ミュージアムについても考えてみました。
この状況下、開館に尽力しているミュージアムスタッフも多いことと思います。それもとても大切なことですね。開館を待ってらっしゃる来館者の方も多いことでしょう。
物理的な空間があることにより、人とコレクションのコミュニケーションが活発化されることもあるでしょう。人と人とのコミュニケーションもですね。来館者にとって、一段階深い癒しをもらえたり、本物と対面する時に感じる凄みや美しさも感じることでしょう。
ここから私の提案です。
この時期を「新しいミュージアムのマネジメントについて深める時期」にするという、視点を持ってはいかがでしょう?
この状況を大きな視点(システム)で捉え、俯瞰してみると、上記のようなことが考えられると思います。
まずは、図の真ん中をご覧ください。「休館/開館できない」を問題と捉えてみます。それを解決しようと、「感染症拡大防止の案を講じて、早期再開館を目指す」という行動は、もちろん良いことではありますが、ここでは、対処療法的な解決策と捉えさせてください。
このここで言う”対処療法”を手放すことで、「開館しなくても存在できるミュージアムのあり方」を試行錯誤できる根本的な解決方法を考えることができると、言えないでしょうか?また、対処療法に固執すると開館を前提とするレジリエンスのないマネジメントという副作用が出てくる可能性があります。実際に、新型ウイルスによる感染症対策は数年行わなければならないという見解があり、ワクチンが開発されるまでは、全面開館はせずに、経営を続けなければならないといった未来がくるかもしれません。
このシステムが指摘できることがもう一つあります。
これは「問題のすり替わり」が起こることです。ミュージアムは「開館する」ことも大事ではあります。しかし、ミュージアムには設立ミッションがあります。この達成のために何ができるか/何をするべきか、考えることも長期的な存続の面でも非常に重要なのではないでしょうか。
休館から脱することばかりに囚われてしまっていて、設立ミッションに沿わないマネジメントが横行していたら、一旦立ち止まって考えられる時期と感じます。こういったことを考えられる、見つめ直すことができるのは今ミュージアムに訪れたチャンスでもあるでしょう。
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開館せずともミュージアムを経験してもらう取り組みを、たまたま発見しました。
投稿にもある通り、文学館の前の川沿いに、展示を持ってきています。また文学作品の力強い言葉たちは、今の状況を乗り越えるパワーを与えてくれるようです。
さて、開館せずとも存続できるミュージアムのあり方を考えてみませんか?